両者の新譜発売のタイミングが重なり実現したOutside dandyとそれでも尚、未来に媚びるのスプリットツアー「バトルロワイアルツアー」。それは奇しくも両バンドにとって、困難を乗り越えて前に進むためのツアーとなった。今だからこそ語れるアクシデントや、ツアーを通して生まれた絆まで。全国・約20本に渡る全行程を終えた、2人のフロントマンが赤裸々に語る、題して「バトルロワイアル対談」始まります。
(取材・文:イシハラマイ)
お互い好きやったから悩む余地なくトントン拍子でツアーが決まった(がーこ)
――「バトルロワイアルツアー」お疲れ様でした。まずはこのスプリットツアー開催の経緯から教えていただければと思います。
村上:経緯っていうか、自然な流れだよね?
がーこ:そうそう。お互い同じくらいのタイミングでリリースが決まっていて。お互い好きやったから、悩む余地なくトントン拍子で進んでいきましたね。
――それ媚びとdandyの出会いはいつ頃だったんですか?
村上:3年前くらいかな。この間、がーことも話しよったけど覚えてなくて(笑)。
がーこ:仲良くなったきっかけも分からん(笑)。
――じゃあ、お互いの第一印象は覚えていますか?
がーこ:最初dandy怖かったなあ。出会った頃はライヴももっとカッコつけてキメキメな感じで愛嬌なかったんですよ。で、ライヴ終わったら終わったで楽屋でメンバーミーティングしてて。なんやコイツらって思ったのが最初の印象かも。でもちゃんと喋ったら同世代だし仲良くなれたんですよね。
村上:俺だって怖かったし。知り合う前にYouTubeで、それ媚びの「夕方の街」を聴いたんですよ。まず演歌やん!って驚いて。でも俺は歌謡曲好きだし格好ええなって思ったんですけど……ヴォーカル怖いなって(笑)。
がーこ:あははは!実際は怖くないけどな?
村上:うん(笑)。
それ媚びのライヴはバンドマンっぽく観れない(村上)
――改めて、出会った頃とバンドの印象は変わりましたか?
がーこ:真反対くらい変わったと思う。付き合いが深くなったのもあるけど、人になったな……と。
村上:あははは!それ自分でも思うわ(笑)。
――人間味が出てきた、と。
がーこ:そう。それがライヴにも出てきたと思う。だから、なんやコイツらこっち側に寄って来よったな、って(笑)。
村上:確かに!
がーこ:ライバル増えて迷惑ですね。「Outside dandyは迷惑です」って書いといてください。……嬉しいけど。
――村上さんから見て、それ媚びはどうですか?
村上:スタンス自体は変わってないけどバンドの一枚岩感はグッと増したと思う。あとは、がーこの言葉がすごく入ってきやすくなった。
――それは歌詞?それともライヴのMC?
村上:MCですね。なんも考えてないだろうから、そのまま喋ってるだけなんやろけど。昔に比べてすごく愛があるし。もちろん昔もそういう片鱗はあったけど、今は小さな事柄に対する感謝を普段の生活でもすごく感じてるんだろうなって。そういう人間味がライヴにも出てるから素直に聴ける。だから俺、それ媚びのライヴはバンドマンっぽく観れないんですよ。
――お客さんになってしまう、と。
村上:だから拳も上げちゃうし。それは一緒にツアーを回ってる仲間だから盛り上げようとかじゃなくて、ひとりの人間として、それ媚びのステージを観てしまう。そういうバンドってなかなかいないですよ。
――がーこさんもdandyのライヴを観る時にそういう感覚はありますか?
がーこ:あるな。dandyのライヴはすごく上手だし、パフォーマンス的なところもすごく前から格好いいなって思ってて。今回20本くらい一緒に回ったけど、どんだけ観ても飽きひん。前後の出番になること多かったけど、それでも観たい気持ちの方が強くて観てたし。
村上:俺も観てた。それ媚びのライヴ観とったら俺らのライヴも良くなるだろうなって。
――つまりお互いがファン同士ってことですね。
がーこ:そうじゃなかったら、あんな過酷なツアー回らへんよ(笑)。
dandyのストイックさが、それ媚びのメンバーにも作用した(がーこ)
――以前よりは歩み寄ったとはいえ、やっぱりライヴの見せ方は対象的だと思います。様式美的なdandyと、本能的なそれ媚び。お互いのパフォーマンスについてはどう思っていますか?
がーこ:俺らは内から湧き出る何かが溢れてライヴになるって感じだから、ここで絶対こうする、みたいなのも全くない。でもdandyは見せ方をちゃんと考えてる。元々ライヴ直後にメンバーミーティングするようなストイックさがあるからね。そういう部分はそれ媚びのメンバーにもすごく作用したかなって。俺らは楽しくなったらそっちに流れて行っちゃうんだけど、ちゃんと割り切ってメンバー間で詰めた話をできるようになったのはdandyのおかげだと思う。このツアーで照明の注文も初めてしたし。
村上:照明大事。
がーこ:この人、照明めっちゃうるさいからね(笑)。
――村上さんはいかがですか。
村上:俺はライヴの中で予定調和の見せ場はあっていいと思ってるんです。ライヴバンドからしたら予定調和というのはマイナスイメージの言葉かも知れませんが「ここでこう来る!」ってところでバキっと決まった時の興奮ってあるじゃないですか。そこから溢れたものがエモーショナルなんであって。俺らはその見せ場を考えて作ってるけど、それ媚びは考えずにそれをやってるからすごい。
がーこ:マジで考えてないし、考えてたとしてもライヴ中なんてアドレナリンが出狂ってるから結局あかんと思う。だけど、そう見えてるなら良かった。
――それ媚びとdandyって、歌謡曲などの根っこにあるルーツは似ているけれど、それを表現する方法論が違うんですね。
村上:そうだと思う。
がーこ:確かに!
格好良いところは違うけど、格好悪いところが一緒(村上)
――だから「バトルロワイアルツアー」が発表されたときは意外でした。似て非なるものというか、異色の組合せ感が否めなくて。
村上:それは確かにあると思う。でも俺の感覚としてはソングライティングって掘り下げていけば人間性が出るものだと思っていて。それを、それ媚びはがーこが、うちは俺がやっている。そう考えたときに、格好良いところは違うけど、格好悪いところはたぶん一緒なんだろうなって。だからそれがバンドにも出て、両バンドを結びつけてくれたんじゃないかな。
がーこ:めっちゃええこと言うな!絶対昨日から考えてたでしょ?
村上:考えてないって!
――村上さんが思う、お互いの格好悪いところってどんなところですか?
村上:人見知りが頑張っとるところとか?
がーこ:あはははは!
村上:あとは、愛の表し方が極端なところ。バンドやってなくて普通に人間らしい生活してたらもうちょっとすさんでたと思うんです。
がーこ:ああ……。俺、しのさん(それでも世界が続くなら・篠塚将行)に言われたんだよね「お前バンドやってて、良かったな」って。バンドやってなかったら、生きてないだろうから。人として全然ちゃんとしてないし。
村上:そうだな……それに尽きるわ。
がーこ:やっぱり、このツアーはある種賭けだったんですよね。自分たちでは自信があったけど、この2バンドはものすごく似ているわけでもないし、本当に気に入ってもらえるかな?って心配は多少ありました。でもツアーを終えて、完全に勝ったなって思ってます。
dandyの「東京Diver」で色々思い出して泣きすぎた(がーこ)
――それを裏付けたのが、それ媚びのツアーファイナルだったんじゃないですか。前日に急遽dandyのオープニングゲスト出演が発表されたのにも関わらず、開場時間からたくさんのお客さんが集まりました。
村上:前日解禁だし早い時間だから、床が見えるくらいだろうなって思ってたからびっくりしましたね。あの日俺らは呼ばれた側だったから、それ媚びを観に来てた人が多かったと思うけど、やっぱり俺の友達を好きって言ってくれるやつらは格好良いなって。
がーこ:格好良いお客さんがようけついてくれて嬉しい。dandyのお客さんもそうだし、うちのお客さんもそう。ああやって企画をしても、全バンド観てくれる人が多くて、それは本当に自慢だった。
――出演バンドの幅も広く、お客さんのタイプも様々でしたが、どのバンドも楽しそうに観ている姿が印象的でした。
村上:俺は好きなアーティストのルーツを辿るのが好きなんだけど、イベントってそれができる場だと思うんだよね。
がーこ:そう!だって俺らが呼んでるんだから。それで最初からずっと居てくれて、盛り上がってくれるって本当に音楽が好きなんだなって。
村上:結果的にめっちゃ良い日だったな。
――2バンドでツアーを回った意味がちゃんと伝わった1日だったと思います。
がーこ:オープニングアクトのdandyのライヴを観てたんですけど、1、2曲目でもうやばくて。僕、すぐダイヴしたい衝動にかられるんですよ。でもこんな序盤からやっちゃうとdandyの邪魔になりそうな気がしてグッと堪えて。でも、最後くらいに「東京Diver」やったやんか?バレたら恥ずかしいなって思いつつも、色々思い出して泣きすぎて。
村上:バレてたよ(笑)。
がーこ:えっ、バレてたん?さらに「さらば、ロックスター」はめっちゃ好きな曲だし、東京を大阪に歌詞変えてたし……。また泣いちゃうー!って(笑)。
村上:あははは!色んなことがあっての昨日だったからな。
がーこ:だから最後、それ媚びの「軋み」で良かった。「わー、やりよったこいつらアホや!」って思えたから。
村上:俺らも最後はそういう感じにしたかったから。オープニングゲストって言われてしんみり終わってもねえ?
がーこ:まあ、人の曲勝手にアレンジするのはどうかと思うけど?
村上:あ、ギターソロ省いたのバレた?(笑)
ツアー前にメンバーがいなくなって落ちるところまで落ちた(がーこ)
――今少しお話にも出てきましたが、今回のツアーは両バンドとも大きな困難を乗り越えての開催だったんですよね。
がーこ:うちはツアー前にメンバーがいなくなっちゃったんです。それでほんまに落ちるところまで落ちたんですけど、当時はサポートだった井地(井地良太・ベース)が心強く一緒に回ってくれて。それに、勇真(Outside dandyベース・鈴木勇真)も井地をめっちゃ可愛がってくれたので、入ってくれたのはそこもあるのかなって。それに関しては感謝しかないですね。
――ライヴの日程が全部決定した段階での失踪だったんですか?
がーこ:そうですね。レコーディング終わったその日にいなくなったんですけど、その時にはレコ発もツアーも全部日程決まっていました。良い出来事ではなかったけれど、それを期に結果的にバンドが良くなったので。負けずにいてくれたメンバーや励ましてくれた仲間がいたので、本当に恵まれていると思いましたね。
村上:心配しなかったわけじゃないけど、俺はそれ媚びというバンドと、がーこのパワーを知ってたから。それに俺は心配されるとかちょっと苦手なタイプなんですよ。だって「大丈夫?」って訊かれたら「大丈夫」って答えるしかないやろって。だから「大丈夫?」って言葉は絶対言わないようにしようと思ってましたね。結果的に大丈夫やったし。
――その状況下でのツアー決行は大変だったと思いますが、それが逆にバンドを止めずに済んだのかも知れませんね。
がーこ:ああ……、確かに余裕がなかったのが良かったのかも。それにツアー中、dandyが精神安定在みたいな役割を果たしてくれてたんですよね、ほんまに。やっぱり考えちゃうし思い出しちゃうし辛くなっちゃうけど、新しいメンバーがいるし、何よりdandyが一緒に回ってくれたから乗り切れた。寝て起きてライヴハウスいけば絶対会えたからね。
村上:俺が言うことでもないけど5人でバンドをやれることのかけがえなさは、がーこが一番感じてるだろうし、メンバーも各々感じてるはずだし。それってバンドとしてすごく美しいこと。育った環境も違う5人がひとつのことをするって、まあまあ難しいことで。まして仕事っていうレールにもひかれてないし、好きなことを人数が集まってやるだけだからね。
――そうですね。
がーこ:友達であれバンドメンバーであれ他人同士があつまって一個のことをやるってめちゃくちゃ難しい。だから当たり前じゃないなって毎回思うし。残った4人はメンバーを失ったことを乗り越えてより強くなったし、新しいメンバー入った歓びっていうのはすごくでかい。だから今は、バンドとして良い方向に動いてるんじゃないかと思います。めっちゃ喧嘩はするけどな(笑)。
村上:メンバーへの感謝が絶対条件じゃないと成り立たない。
音楽を辞めるなら、最後に自分の作りたい曲を素直に作ろうと思った(村上)
――そしてdandyも色々ありました。
村上:ああ……うん(苦笑)。俺らは今年の1月にガチの解散話があって。その頃は『Midnight Taxi Radio』もなかったし。曲もないし、どうしようかなってなって。俺は今のバンドを解散したらもう音楽を続ける気はなかったから、さすらいの料理人にでもなろうかと思ってたんですけどね。それじゃあやっぱり後悔するな、と。それでもう曲を作るのも最後かもしれないから、自分の作りたい曲を素直に作ろうって出来たのが「ミッドナイトタクシーレディオ」だったんです。だから歌詞もそういう感じになっちゃったし。
――それでも解散を思いとどまったきっかけは?
村上:この曲が出来たのと、あとはそれ媚びとのツアーが決まってたこと。それを無しにするのだけは、俺の中になかったから。だからちゃんとケツを拭こうって考えたら、音源を出なさいといけないと思って。それで曲を作ってレコーディングしてツアーを回るうちに「ああ……俺、音楽やめたくないな」って思ったし、メンバーの中にもそういう気持ちが芽生えたんですよ。
――なるほど。
がーこ:さっき、俺らのメンバーがいなくなった時に大丈夫だろうと思ったって言ってくれたけど、俺はdandyのことめっちゃ心配で……。みんな突き詰める人たちだから、一個何かが弾けたら、ほんまに居らんくなっちゃいそうで。それに、ことあるごとに辞めてもええかなとか言ってるから。普段のミーティングとか知らんけどさ。俺らはバンドを辞めへんのが当たり前で活動してて、解散って言葉が一回も出た事がなくて。
――そうなんですか!?
がーこ:絶対的な信頼がメンバーにはあるから。解散って言葉は絶対に出ない。誰かが死んだら解散かな、くらい。さすがにそれは悲しすぎて続けられる自信がないから。でもdandyは弾けて消えちゃいそうだから……それが怖くて。
村上:刹那的に生きてるからな。
がーこ:だから俺はだいたい酔っ払ったら解散したら殺すぞって、めっちゃ言ってるんです。無くなってほしくなさすぎるから……色んな事情があるから仕方ないことが多いけど、こんなに辞められて嫌なバンドは居らへんし。ただやっぱりライヴ観てると、早よ辞めろって思うし。腹立つ(笑)。
死なへんために音楽はある(がーこ)
――dandyを見てると曲がバンドを救うんだな、とつくづく思います。
村上:本当に顕著ですよね。毎回、解散話が持ち上がっては良い曲が出来て続くっていう(笑)。でも最近気付いて曲を作る時にメンバーにも良く言うんですけど、伝えたいことなんてないんですよ。だから、もうこれ以上ないって状況に追い込まれないと良い曲って絶対できないし。これを伝えたいからこの曲を作ろうみたいな、そんな簡単なことじゃない。
がーこ:わかる。俺も狙って作れたことがないもん。だから悲しみのバラードばっかりできてしまう。
村上:言い方悪いけど、昔の人は生活的に満たされていないから精神世界で幸せを求めるしかなくて宗教が出来たと僕は思ってて。音楽もそういうものだと思うんですよね。普通に生きとったら満たされんから、違うところで幸せを満たすしかない。僕らは満たされないから音楽をやるけど、聴きに来てくれる人たちもそうなんじゃないかと思う。だから気休めでしかないかも知れないけど、気休めに命をかける。そういう奴らが居ってもいいやないかなって。
――気休め、って気が休まると書きますからね。気が休まらなかったら生きていけないですし。
がーこ:うん。死なへんために音楽はあると思ってるから。
ツアーの合言葉は「高みへ」(がーこ)
――「バトルロワイアルツアー」、次回があると思っていいんですよね?
村上:明日からでもやりたいくらいだけど、そうもいかないから(笑)。次までは寂しいですけど、数字的なことを言えば俺らは全然それ媚びにまだ及んでないから、そこを磨いていこうかな、と。やり方は違うけどもっと切磋琢磨できると思うから。次に会ったときにお互いがどうなってるかは楽しみですね。
がーこ:確かに、ちょっと空くことで絶対負けてらんねえぞっていう気になる。次に一緒にやるときに、がっかりしたくないし、されたくない。まあ、がっかりすることはないだろうけど。それに離れていてもずっと意識はしてると思うから。まあでも大きいステージには立ちたいよな。上には絶対いきたい。そういう意味でも「高みへ」って合言葉ができたわけだし。
――ツアー中に、そんな合言葉が生まれていたんですね。
がーこ:レコ発の時のタイトルが「超頂上決戦」だったので、その打ち上げの乾杯の時に「高みへ」って言ったのが始まり。
村上:それで強いちっちゃいお酒を飲む、っていう風習が出来上がりまして(笑)。
がーこ:まあそれもまた一個約束だな。
村上:それが叶ったとき、バンドとしてまたひとつ一番美しいかたちになるし。
がーこ:でも「高みへ」って言いながらどんどん自分らは堕ちていくねんけどな。そのお酒を飲むことで……(笑)。
本当にありがとう、これからもよろしくとしか言えない(村上)
――最後に、お互いに向けてお互いに向けて思いの丈を。
村上:全部話したからなあ。ここまで話しても、本当にありがとう、これからもよろしくとしか言えないかな。仲良いバンドとか仲良い人とかはいるけど、そう言うのとも違って。本当に大切な仲間。それしか言えないですね。
がーこ:何やかんや、この先一生嫌いになることはない。一生好きやと思うから。あと言うことがあるとしたら、バンド辞めたらマジで殺すくらいかな。さすらいの料理人になんかならんでいいからな!